らしく我侭を貫き、モロフの手がそっとスラックスの下へと滑り込み、仁春の変化の起こった部分に握りつく。これで初めて自分が勃起したことに気づく仁春はまた一段赤くなり、両足を必死に揃え真ん中を隠そうとしたら、モロフの下半身を挟むようなカッコウになるだけで。女みたいな自分を想像すること自体がたまらなく、仁春は無駄に男を押しながら言う。
「何でおれが下なんだよ?!」
「上にいたいか?」とぼけるモロフ。「おれは別にいいんだが。変わるか?」
「…」
「お前、いつもそうだ。」
しばらくモロフは体を上げ、自分の上着とベルトをはずしてズボンを下ろす。明らかに大きくなった性徴を見たとたん頭の中がぐるぐる騒ぎ出した仁春は、すぐ目をつぶって顔を隣にねじる。
「――わかっていてきれいごとで説教するのが趣味なんだな。」モロフは彼のあごをつかんで無情に自分へ向ける。「なんなんだ、今のは?おれを見たくないとでも?」
「…」
「女とは寝といて、おれはだめだってんか?いまさら後悔したっていうの?」
びびっていながら目を開けたら、彼の顔が間近にあった。やはり表情が怖い。いつよりも険しい。鋭いつやのついた茶色の瞳から、高温を帯びている焦りが放たれ、まっすぐ仁春の目を刺す。思わず仁春は動ける片手を上げ、ブロンド髪の男の首筋に抱きつく。
舌先が口中で絡み合い、喉にまで至り、吐息と熱度が伝わってくる。モロフのたくましい胸元と腹筋が自分のに強くくっついて、快感がシーツから体内に集まってくるかのように仁春はぞっと震える。ゆっくり肩、腕と胸を触られ、モロフの舐めと噛みを感じるたび、仁春が一倍の努力で声を抑えざるを得ない。が、快感はそれでとめられたものではなく、やがて彼の目が濡れた。
「…そんなにいいか?」
幸い嘲笑を帯びていない声が耳元で要求する。「叫んで。おれに声を聞かせろ。」
「いやだ…」
軽く頭を横に振ると涙がこぼれてしまい、仁春は自分に対して不満を感じた。首筋あたりにモロフが吸い付いてくると、痕がつくのが心配で仁春は避けながら口ごもって抗議する。
「見られてしま――」
「上等だ。」
不機嫌さが男の顔に戻る。「やっぱりおれと論争するつもりだな?確かに聖書は同性への欲情を禁じてる。でもウッシェルのシャードへの愛が歌われ、二人の間伝経者ケイウォが生まれて人間同士の愛と肉体関係が認められた。おれは、同性に欲情を発散させる趣味はないし、第一、別に厳重な肉慾を抱いてるとは思わない。ただおれはお前を愛してるから、彼らが愛し合うように、だからお前を抱きたいと思うだけだ――まだ異議があるか?」
「…」
途中のところから仁春が顔を覆っていた。モロフには逆らえないことはずっと昔から知っていたのだ。その率直すぎて衝撃さえもたらす告白を、未だに受け入れきれずにいるけど、少なくとも一つが明白だ:彼は、自分を抱きたい。この決定事項は逆らえない。
「あるとしても、おれはもうとめられない――同じ男だったらお前もわかるはずだろ。それに、」
再び彼が突如、仁春の股間の大事な部位に触り、後者はつい我慢しきれず声を上げる。満足そうにモロフが笑みを浮かべ、また彼に重なって立った性器をさすり合わせ、低い声で事実を告げる。
「――お前も、ほしいんだろ?」
「…もうわかったから。」危険な先端が容赦なく掴まれて撫でられ、仁春は眉をねじって涙を浮かべる。「好きにしろ。」
「そうさせてもらうつもりだが。」
話している間自分がすでに窮地に陥っていることに仁春が気づく。思い出すだけで顔が熱くなる、昔のセックスと自慰の経験では、こんなに早く絶頂に近づくことはなかったのに。モロフの触感が電源のように体温を高めていく一方で、体が勝手に揺れ動き彼にすがり付こうとする。仁春も手を上げて彼に触り、硬くなった分身を触られればモロフが眉をしかめ、深く息を吸って仁春に口付ける。
「はあ――」
かなり激しい律動の中で仁春は震えながらあえぎ、同時にモロフが深く噛むように彼の首筋に吸い付き、やがて二人は一緒に頂点に至る。波のような快感が絶えず涌きあふれ、まるでそれを恐れているように仁春の全身が上の丈夫な体に寄り付き、手もしっかりつかまっていて放さない。モロフは彼の腰に腕を回し、しばらくたってから荒い息が収まる。脱がしかけた服がまだ腕に纏い、仁春が抱きついているままで、モロフは少し力ずくで体を支えあげる。触れ合う肌の間に慣れない湿った触感、考えずともわかってしまい、仁春が顔の熱さを感じ、目を閉じて彼を見ないようにした。
「…」
やさしくキスが瞼に落ち、続いて鼻先、唇とあご。低く澄んだ声が聞こえる。
「今日は、これで勘弁してやる。」
ほっとした。あまり同性とのやり方がわからないけれど、モロフがこんな愛撫で満足することはないと仁春はわかっている。でもそれでもかまわない。後のことは後で考えよう――と甘く思い込んでいるところ、モロフの独り言に、重たい現実をまっすぐ目の前に投げつけられたのだが。
――「今度、おれは中に入れるから。」

その恐るべし宣告と比べれば、仁春の回復につれどんどん頻繁になってくる、落ち着かない夜のほうが、まだ楽だかもしれない。空前の情勢転換の後、モロフは並みを遥かに上回った圧力に直面しているのにも関わらず、本人の反応は普段より一段不機嫌になった顔に切り替えたまで。体力の損耗がなく、仁春にやった唯一の思いやりは、目覚める時に彼がすでに部屋を出て、仁春は恥ずかしがらずに済むというところだけだった。
「いやだって――!」
両手はしばらく対抗できる程度に回復している。が、体力といい意欲といい、さすがにモロフのほうが圧倒的な優位に立っていて、仁春を枕の上にしっかり押さえ付ける。
「おれがお前に強いてるってふうにしたいわけ?」
「強いてるのは事実だろっ!!――」
強姦という行為が卑怯だというのは、被害者が非自発的に共犯にされてしまうからである――と主張したい仁春だったが、無論発言の機会は与えられず、簡単に唇をモロフが封じる。部屋中は真っ暗で、窓の外から反射がわずかに顔を照らす。男の軽蔑を帯びた表情。抵抗できない、揺るぎのない鋭い視線。見ると仁春がつい、勢いを下げてぼそぼそと言う。
「…おれは…おれは、お前の女じゃないからっ…」
「確かに。」近寄って彼の唇が仁春の頬に軽く触れる。「お前が女だったらちょっとは遠慮してやった。――でも抱きたいという事実は変わらない。」
「…」
「おれの言うことがわからないといってもかまわない。言いたいことは全部話した。おれだけのために生きるんだったら、黙って従えばいい。」
彼の性格の中には、確かにこういう暴君っぽいところがあって、親しい相手なら理不尽とさえ感じる。が、今硬く冷たい口調の割には、声も動きも随分と手加減を加えたように見られる。仁春が反論の言葉を探しているうち、彼がもうすでにボタンをはずし、慎重にけがを避け指腹で周りの白い肌に触る。我慢できない仁春が呻きを抑えられず、反抗の気力をなくして二人は唇を重ねあう。悔しげに、仁春はモロフの背中に手を回す。
「…お前も、少しは理解しろ。」
命令的にモロフは恋人の耳元でささやく。「これで、もう我慢の限界なんだぜ。」
仁春は赤面して視線をそらす。未だに、自分に対して親友が抱いている感情と欲望を完全にわかりきれずに、時々彼の執着に戸惑いを覚えるけど、弱音めいた告白に口の最後の堅持をたやすく剥奪されてしまった。見た目では付き合いにくいこの人は、もしかしてある独特な意味では恋愛の達人だったかもしれないと、仁春がだんだん気づき始める。
「お、お前…昔もそんなふうに女性を口説いたんかよ…」
こっちの反応をかまわず彼の上着を脱いでいたモロフが急に手を止める。空気に迫られ適当に言葉を口にした仁春はやっと彼の表情を気づき、ぼんやりまずいと察したら、まだ抵抗している腕が強く征服された。
「この前も思ったんだが。」モロフは冷淡に口を開く。「お前、やけに女の話題に熱中してるんじゃないか?てことはおれが勘違いしてた?なるほど。」
そして片手を上げひたすら仁春の残った服とスラックスを脱がし肌を暴き出す。いきなり動きが荒くなり、粗末な態度に慣れているはずの仁春が恐れを感じた。
「モロフ!!」
今までのわがままながら思いやりのあるモロフが消えた。目も前の男が本気で怒っていると仁春が確信している。ベッドの真ん中に押し倒され、傷口の痛みが久しぶりに拡大させられてしまったというのに、仁春の表情を見ればすぐわかる男が冷たく無視した。
「モロフ!!――待て、お前――」
スラックスを膝以下に引かれ、暖炉のついた部屋の中で、暖かい空気がゆっくり肌を刺激する。初めての愛撫以来ほとんど毎日同寝していたが、二人がやったことは触れ合いと口付けまでで、服をすべて脱ぐ必要などなかった――それで直感的に仁春が、自分が今どれだけ危険な境地に陥っているかを理解し、驚いてビクッと体を引こうとしたが、モロフが正確に彼を制止した。
「そんなに女のことが知りたいなら、今日おれが教えてやろうか。」
静かに彼は言う。危険な怒りの空気が漂い、それから焦り――すぐさま仁春が察知した。モロフの不機嫌や無愛想など彼にとっては尋常なことで、こんな友人兼上司に応対するのがとっくに彼の根性を鍛え上げた。が、焦りだけは珍しく、荒い気性の裏では、モロフの頭がいつも冷静だった。だからこそ仁春は今状況が読めず、目の前で手早く服を脱いでいる男を恐れてにらむのみ。
「なにびびってんだ?お前も女を抱いたんだ。ぼけるんじゃねえ。」再びモロフが彼を押し倒す。「何度もこんな話題でうるさがるより、おれが一度全部教えてやったほうがいいんだろうが。」
「お前…もしかして…」
「なんだ?」
勇気出して仁春は最後まで言う。「…妬いてんの…?」
「そうだ。」
薄っすら目を細め、男が厳しく仁春を見つめて、率直に認める。
「お前が自分の立場をわきまえてると思ってた。けど今のその様子じゃ、仕置きでもしておかないと、もうすぐお前はおれに介添えを頼みにきそうじゃないか。」
「そんなわけ――」
「はっきり言ったはずだ。おれの告白がわからなくてもかまわんって。」口出しを許さず、モロフは俯いて彼の顔を掴む。「でも約束守ってくれなければおれが許さん。――おれだけのために生きて、ほかのやつのことは考えるな。聞こえたか?」
言葉を投げつけたら強く仁春に口付け、返答をふさぐ。こいつはこんな自己本位なやり方だったのかと、混乱していながら仁春が思う。

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